ホーランド&シェリーの生地の種類や特徴・人気の理由をプロが語る【HOLLAND & SHERRY】
世界最古のマーチャント(商社)と言われている「ホーランド&シェリー」
この記事では、生地の種類が豊富なホーランド&シェリーについてまとめていきます。
どんな生地でスーツを作ればいいのかわからない、生地の種類を知りたいという方はぜひ参考にしてください。
ホーランド&シェリー(HOLLAND & SHERRY)の生地の特徴
ホーランド&シェリーは数多くのバンチブック(生地見本の台帳)を制作しています。
其の中でも得意としているのはイギリスらしいと聞いて連想するようなハリコシの強い生地。
また、ストライプやプリンス・オブ・ウェールズをはじめとしたクラシカルな柄を多く揃えています。
生地が豊富
毎シーズン新しいコレクションの発表、あるいはこれまでのコレクションをリニューアルします。
生地の織り方、使っている素材、生地の特徴によって40〜70種類の生地でコレクションされたバンチブック。
着用シーンやスーツに求める機能性からコレクションを選んだとしても色柄を十分に悩めるほどの豊富な生地を取り揃えています。
ホーランド&シェリー(HOLLAND & SHERRY)の生地の種類
ホーランド&シェリーのコレクションを一部紹介するとともにその特徴などを解説していきます。
Inter City(インターシティ)
秋冬のスーツとしてオーソドックスなInter City。
1メートル当たりの重さ(以下目付け)が370g/mとややしっかりめの生地です。
参考までにオールシーズン向けと言われる生地が240g/m〜260g/mとされています。
秋冬向けでも290g/m〜320g/mが人気です。
イギリス生地らしく経緯ともに双糸でハリコシのつよい生地です。
ビジネスシーンでの着用を想定しており、シワに強くややヘビーな着用にも応えてくれることでしょう。
耐久性も高く、仕立て上がったときに美しいドレープを作ることからタフなビジネスシーンに最適な一着になること間違いなしです。
City of London
目付け420g/mの生地で構成されるCity of London。
数値を見るとかなり重いと感じますが、仕立て上がると不思議と数字ほど重厚感を感じないのが不思議なところ。
経緯ともに36番手双糸で織られた生地はふっくらとした質感を持ち合わせています。
イギリスのクラシカルな生地の風合いを持ち合わせながらビジネス用途でも使いやすいバランスで作られています。
ピンストライプ、チョークストライプのストライプ系は当然のこと、クラシックな柄が揃っています。
イギリスの伝統を纏い、ビジネスでの戦いに身を投じるのに最適と言えます。
CLASSIC MOHAIR
モヘアは近年目に触れる機会の増えた素材の一つではないでしょうか。
夏、あるいは春夏秋のスリーシーズンにおすすめの素材です。
そんなモヘアを使用したコレクションの一つがCLASSIC MOHAIRです。
モヘアの特徴として、サラッとした質感があります。高温多湿な日本の気候の最適解の一つです。
230g/mでキッドモヘアを使ったものと290g/mのものがあり、より夏向けに着ることを考えるなら230g/mの生地がおすすめです。
強い光沢を持っており、夏に人気の薄手の平織り生地や強撚の生地は光沢が弱いため、夏場を快適に過ごしつつもドレッシーな装いをしたい、夏場のパーティーで着床するフォーマルウェアにいかがでしょうか。
40種類近くの生地は全て無地ですが、その分豊富な色があり生地をめくる毎にワクワクさせられます。
SHERRY STRETCH
Lycra(ライクラ)・・・日本ではポリウレタンの名で親しまれているストレッチ素材を使ったコレクションです。
240g/mの平織りの生地は春夏生地とされていますが、日本の夏は厳しいと考えざるを得ません。
3月〜6月、9月〜12月頃が着用しやすい目安です。
ストレッチ生地ですので細めのサイズで仕立てるのもおすすめです。
柄はストライプやグレンチェック、ハウンドトゥースなどクラシカルなものが多いです。
無地を中心に明るい色もありますがイタリアのそれとは違い、艶っぽさや鮮やかさは感じません。
ビジネスシーンで明るい色を使いたいが、しっかりとした感じを出したい場合や女性の細身のスーツにおすすめのコレクションです。
ECO-TRAVELLER
スーツがお好きな方にはエルメネジルド・ゼニア(以下ゼニア)のTRAVELLERをご存じの方は多いのではないでしょうか。
文字通り旅行や出張の際に活躍するスーツ地です。
ゼニアのTRAVELLERがイタリア生地っぽく艶感があるのに対してECO-TRAVELLERはハイツイストの平織りという春夏向け生地の作りになっています。
230g/mの生地は春夏向けというより寒冷地帯を除く世界中を旅するための生地なのかもしれません。
ホーランド&シェリーがTRAVELLERを関するコレクションで重視しているのが
・シワになりにくいこと
・復元性が高いこと
またハイツイスト生地の利点として
・通気性があり、吸湿性と放湿性を兼ね備えていること
・ドライな質感で蒸れにくいこと
旅行や出張に必要な機能性を備え、特に湿度の高い気候に対応した生地です。
コレクションにECOとあるように節水仕上げで環境にもやさしいコレクションとなっています。
AIRESCO(エアレスコ)
3plyと4plyの生地から成るコレクションがAIRESCOです。
平織りで織られていることと色ムラが出るように作っていることからややカジュアルな雰囲気を持ち合わせています。
ハイツイストの生地同様にドライな質感でサラッと着やすいのが特徴的です。
また、先述の通り色ムラを感じさせる生地が多く、粗さのある織り方ですので細身のスタイリッシュな装いよりリラックス感のあるサイジングや伝統的なサイジングによる仕立てがおすすめです。
ビジネスシーンでは中々着る機会のない色の生地もあるので旅行時に着る一着としてもいいでしょう。
CRISPAIRE(クリスペア)
30年以上前に出張向けのスーツ地としてCRISPAIREはデビューしましたが、AIRESCOやECO-TRAVELLERに代表されるようなハイツイスト生地などが出てくると定番生地として愛され続けています。
春夏向けのコレクションですが、大体280g/mから310g/mの重さ(天然繊維を使っていることなどから重さにばらつきがある)なので日本の夏にはやはり厳しい。
太番手の平織り特有の粗さを感じますが、グレンチェックやハウンドトゥースの生地を選べば粗さはあまり目立たない印象です。
遊びを効かせた生地もコレクションされていますが、全体的に真面目な印象です。
先述していますCITY OF LONDONの春夏バージョンと捉えてもいいかもしれません(決して日本の夏に使いやすいわけではありませんが)
春秋と梅雨時期を快適に過ごすためのスーツでクラシカルな雰囲気を楽しみたいときにおすすめです。
ホーランド&シェリーが人気の理由
長い歴史を持ち合わせ、イギリスらしいとも言える生地のコレクションを作り続ける一方、ECO-TRAVELLER新しいコレクションも作り続けていることがホーランド&シェリーの人気の一因ではないでしょうか。
クラシカルな雰囲気と現代に求められる機能性の両立、定番を守り続ける姿勢、新しいものの開発、これらが高い次元で世界中のファンに応え続けているからこそホーランド&シェリーは人気なのでしょう。
まとめ
チェンジポケットやグレンプレイドなど英国的な要素を少しずつ取り入れている近年。
一度生地の風合いも英国的にするのはいかがでしょうか。