スーツ販売員が教える!長持ちするスーツの手入れ方法
最終更新日:2021年2月27日
スーツの寿命は何年かご存知でしょうか?
一般的にスーツの寿命は3~4年と言われますが、私は10年前に仕立てたスーツが綺麗な状態で残っています。
私のスーツが長持ちしている理由は、テーラー業界に入り洋服の知識と正しい手入れの方法を学んだおかげです。
スーツ(オーダースーツ含む)を長持ちさせるため、理解しておくポイントがあります。
スーツの手入れは消耗の進行を遅らせることが出来ますが、消耗が回復することはありません。
そのため、日々のお手入れの積み重ねが大切です。
日頃私が実践している手入れの方法をご紹介します。
着用後の手入れを徹底する
丸1日着用したスーツには、汗やホコリなど消耗の原因物が付着しています。
正しい手入れをした後に保管しましょう。
ブラッシング
スーツを長持ちさせるうえで、ブラッシングはとても大切です。
ハンガーに掛けた状態のスーツにクシを使って髪の毛をとく様に、上から下にブラッシングします。
玄関でたった1分のブラッシングを帰宅後のルーティンにするだけで劇的な効果があります。
ブラッシングによるメリットは3つあります。
ホコリや花粉を落とし、付着しにくくする
1日着用したスーツは想像以上に汚れています。
目には見えない小さなホコリや花粉が付着しています。
付着したホコリを放置すると静電気が発生し、よりホコリが付着しやすくなる悪循環に陥ります。
ブラッシングはホコリを落とすと同時に付着を防ぐ役割もある為、花粉症対策としても有効な手入れです。
生地の消耗を抑える
生地には繊維の向きが存在します。
気付かぬうちに逆毛になり、悪化して擦れ合うことで毛羽立ちが起きます。
毛羽立ちが更に悪化して毛玉になると、最終的に毛玉取りで取り除く必要があります。
上から下にブラッシングして繊維の向きを整えることで、消耗の原因となる毛羽立ちを抑えます。
毛並みが揃うことで光沢感が出るため効果を実感しやすいです。
虫食いを防ぐ
スーツに使われる繊維はウール(羊の毛)が大半です。
ウールが毛羽立つことで汚れが付着しやすくなり、虫にとって非常に良い環境となります。虫は天然素材のウールが大好物です。
ブラッシングは表面のホコリだけではなく、繊維の奥まで入った汚れまで掻き出せるため虫が寄りつきにくくなります。
臭いのケア
汗やタバコ、食べ物の臭いはビジネスマンとして好ましくありません。
相手に不快な印象を与えるとともに、会社のイメージまで悪い影響を与えかねません。
臭いが残ったままのスーツをクローゼットに収納すると、他の洋服にも臭いが移ってしまいます。
スーツの臭いを効果的に消す方法は以下です。
屋外で陰干し
最も簡単な臭いのケアは、ベランダの日陰で一晩干すことです。
新鮮な空気が常に循環しているため、大抵の臭いが消えます。
注意点は、必ず太陽の光が当たらないところを選ぶことです。
太陽光に長時間当たるとスーツは日焼けして変色するため、直射日光はもちろん窓越しの反射が当た場所も避けましょう。
消臭スプレー
正しい消臭スプレーの使い方は、ブラッシング後にまんべんなく吹きかける だけです。
汚れが付着したまま消臭スプレーを吹きかけると、繊維の奥まで汚れが浸透します。
消臭スプレーは便利ですが、使用方法を誤ると消耗の原因となる場合もあります。
消臭スプレーは必ずブラッシング後に使いましょう。
シワを伸ばす
シワを伸ばすにはスチームアイロンが効果的です。
スーツに押し当てるタイプの一般的なアイロンでも代用出来ます。
方法としては、スーツから噴射口を15cm程遠ざけてスチームを当てます。
一部分に蒸気が集中しないよう、こまめに動かしながらシワを伸ばしましょう。
注意点は、必ずブラッシングで汚れを落としたあとに行うことです。
汗や食べ物の臭いも蒸気で飛ぶため、効率の良い手入れになります。
トラブルシーン別|スーツの手入れ方法
日々の手入れ方法ではカバーできないトラブルシーンの対策です。
スーツが想定外の事態に陥った時、正確でスピーディーな手入れをすることが長持ちのポイントです。
雨に濡れた時
急な雨でスーツが濡れた時は、まず水分を拭き取ることが大切です。
乾いたタオルで濡れた部分を軽くたたきながら水気を取っていきます。
生地が痛む原因となるため、擦らないようにしましょう。
表面の水気を拭き取った後に、風通しの良い場所に陰干しして乾かします。
雨の程度によって対処が異なるため、想定外な状況に陥った対応法をご紹介します。
泥水が跳ねた場合
雨の中を歩いた場合、スラックスの裾部分に泥水が跳ねています。
乾いたタオルで表面状の水気を取った後、少し水に濡らしたタオルで軽く押し当ながら泥水を抜いていきましょう。
何度か繰り返すことでしっかりと泥水を抜いていきます。
十分に拭き取ったあとは、風通しのよい場所で陰干しをして乾かします。
びしょ濡れになった場合
ゲリラ豪雨で水滴が垂れるほど濡れてしまった場合は、すぐにクリーニング店に相談しましょう。
クリーニング店に持ち込む際の注意点は、スーツを折り畳んで袋に入れないことです。
型崩れやバブリング(芯地の剥離)の原因になるため、折り畳まないようにクリーニング店へ持ち込みましょう。
びしょ濡れになった場合の応急処置としては、乾いたタオルで出来る限り水気を拭き取ります。
大量に汗をかいたとき
汗を吸収したスーツを放置すると、カビや臭いの原因となります。
水に濡らして絞ったタオルで軽く叩いて、しっかりと汗を吸い取りましょう。
クリーニング店の汗抜きサービスを利用するのも便利な方法です。
食べ物の汁が付着したとき
シミを綺麗に抜くためには、食べ物の汁が付着したときの最初の対応が重要です。
クリーニング店やシミ抜き専門店に持ち込む前に、正しい応急処置をしておきましょう。
シミの原因である性質は、水溶性と油溶性の二つに分かれます。
シミ部分に霧吹きで水を吹きかけ10秒程置き、水が染み込めば水溶性、染み込まなければ油溶性です。
水溶性と油溶性で応急処置が異なるため、どちらか判断します。
水溶性の場合
ソース、醤油、ケチャップ、ワイン、コーヒーのシミは全て水溶性です。
シミになった箇所の内側部分に乾いたタオルを敷き、ぬるま湯を絞ったタオルで叩きながら吸い取ります。
何度か繰り返すことで徐々にシミが抜けていきます。
油溶性の場合
ラーメンのスープ、唐揚げ、天ぷらのシミは全て油溶性です。
まずは表面の汚れを乾いたタオルを使い、擦らずに軽く拭き取りましょう。
そのあとに台所用洗剤やクレンジングオイルをシミ部分に付けて、ぬるま湯で軽くもみ洗いするとシミが抜けていきます。
シミの成分によって効果が得られない場合は、クリーニング店に相談することをお勧めします。
出張先でも簡単にスーツの手入れが出来る3つのコツ
出張用の荷物に、スーツのお手入れ道具を持っていく方は少ないと思います。
宿泊先のホテルでも出来る手入れ方法をご紹介します。
お風呂場に吊るす
ハンガーに掛けたスーツを入浴直後の浴室に一晩吊っておくと、スーツ自体の重みで自然にシワが取れます。
スチームアイロンを使用するのと同じで、蒸気でシワを伸ばします。
ベルトを付けたまま逆さ吊り
1日着用したスラックスの膝裏部分はシワだらけです。
座ったり屈んだりする動作によって、ジャケットよりもシワが付きやすくなります。
ベルトを付けたまま裾から逆さ吊りすると、ベルトの重みで膝裏のシワを伸ばせます。
ズボンプレッサーを使う
ズボンプレッサーとは、スラックスを手入れする機械です。
ほとんどのビジネスホテルにズボンプレッサーが準備されています。
数分でシワが伸び、センタークリースまで付けられる便利なアイテムです。
手入れ後の適切な保管方法
正しい手入れをしても誤った方法で保管すると、カビや虫食いの原因となります。
綺麗な状態を保つためには、陽が当たらない風通しの良いところでの保管が大切です。
保管する期間によって方法も変わります。
一週間以内に着用する場合
1週間以内に着用する場合はクローゼットに保管します。
クローゼットが混雑しないよう、服と服の間にスペースを空けて空気の通り道を作りましょう。
一か月以上着用しない場合
1ヶ月以上着用しない場合はクリーニングに出す方が多いと思いますが、ビニール袋から不織布のケースに移し替えましょう。
ビニールの裾など僅かな隙間から吸収した湿気を十分に放出することができず、カビの原因となります。
月1回程度はカバーから外して、風通しの良いところでたくさんの空気を吸わせましょう。
まとめ:日常の手入れが効果的
スーツを長持ちさせるためには、着用後の手入れを積み重ねることが大切です。
手入れによって現状維持は出来ますが、回復は出来ません。
私のクローゼットに残っている昔のスーツは、全てしっかりと手入れをしてきました。
そのため、今でもかなり良い状態を保っています。
クローゼットを開ける度、改めて手入れの重要性を実感します。
上記は実際に10年間手入れを続けている私のスーツです。
ボタンが緩んだりしましたが、手入れを重ねたおかげでとても愛着のあるスーツになりました。
気に入ったスーツを長く愛用することが、スーツに使う金額を抑える最も経済的な方法です。
SARTO KLEISでは、オーダースーツの注文だけではなく手入れの方法についてもアドバイスさせていただきます。
どうしても手入れが面倒な方は、手入れの必要が少ない機能性生地でスーツを仕立てることも可能です。
ぜひ一度、SARTO KLEIS までご相談ください。
オーダースーツ専門店 サルトクレイス
近藤
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