Savile Clifford「伝統」と「革新」相反する二つの強み
最終更新日:2021年9月13日
『論語と算盤』新一万円札に描かれる渋沢栄一が著した書です。論語つまり孔子の教え(”算盤商売における利益追求、これら2つを両立しなさい”)どちらか一方ではなく、両立させることを説いています。
『論語と算盤』に限らず、どちらか一方のみになり、両立が難しいものは多いことと思います。
古きものを受け継ぐ伝統と、より新しいものへと変化する革新、両立が難しいものの一つではないでしょうか。
Savile Clifford-サヴィル・クリフォード-
イギリスはハダースフィールドに構えるサヴィル・クリフォード。最新の設備を備えた工場で生地を織っています。デザイナーによる独自性ある色柄が扱われています。
サヴィル・クリフォードの特徴
サヴィル・クリフォードはイギリス的な生地の特徴とイタリア的な生地の特徴を併せ持ったブランドです。近年はイギリス、イタリア共に極端に”らしい”生地は減少の傾向にあります。
極端に”らしい”生地は減少し、各々がイタリア生地、イギリス生地の良いところを取り込んでいき、癖のない生地が増えてきています。こういった生地はスーツのスタイル(ブリティッシュ・ナポリ・ミラノ・アメリカンなど)に左右されず使いやすく重宝されています。
イタリア生地は柔らかさやぬめり感のある光沢が代表的な特徴です。一方で耐久性を犠牲にしています。摩耗もそうですが、湿度の高い日本ではヘタレやすく、お世辞にも着やすいとは言い難いものも多いです。
緯糸を双糸にするなどして耐久性を高めるなどしてややイギリス生地に寄せる生地が増えています。
サヴィル・クリフォードはイギリス生地の基盤を持ちつつ、イタリア生地のようなデザイン性ある生地を出しています。
「伝統」
サヴィル・クリフォードはイギリスの伝統的な生地の特徴を持っています。シワに強く耐久性のある生地は実用的です。
日本と同様に雨の降る日の多いイギリスではヘタレにくい打込みのしっかりとした生地が求められます。サヴィル・クリフォードは打込みもしっかりしており、シワの復元性や耐久性を生み出しています。
ハリコシもある生地は仕立てによって立体的なシルエットを作りやすく、テーラーに求められる生地であるのです。
「革新」
前述の通り、サヴィル・クリフォードは最新の工場で作られています。ホームスパンで作られるイギリス生地などもある中でです。
またデザイナーによって作られるコレクションはイギリスの伝統を感じさせる色柄でありながらデザイン性の高い生地です。
「伝統と革新」を体現した生地
イギリスの生地は伝統的な色柄で作り続けており、それ故にクラシカルでどの時代でも通用するものです。サヴィル・クリフォードはそれをベースに絶妙なバランスでデザインを加え、新しい生地でありながら、イギリスに古くからあるかのような伝統を感じさせます。
どのように仕立てるか
生地の質感としてはイギリス寄りではあるものの、ややハリ・コシがある程度であるサヴィル・クリフォードはしなやかさも持ち合わせています。癖のあまりない生地です。
機能面で言えばハリ・コシがあり、打込みもしっかりとしているのでヘタれにくくシワにも強い。耐久性もしっかりとしているので長く愛用することができます。
あとは仕立てによってどのようなスーツとして完成させるか。構築的に仕立てるか、柔らかく包み込むように仕立てるかじっくりと考えましょう。
イギリス的に仕立てる
サヴィル・クリフォードが作られているイギリス。サヴィル・ロウには多くのテーラーが存在し、各々ハウススタイルがあります。
今回はこちらのHantsmanを参考に。
長い着丈と深めの股上のトラウザーズです。胸元はボリュームを出しウエストを絞り込むことでメリハリのあるシルエットを作っています。腰ポケットはスラントポケットで着丈が長いこともありますが、高めの位置にあります。
フロントボタンが1つボタンですが2つにしても問題ありません。イギリス的なドレッシーさをもたせるなら1つボタンもいいです。
スーツのみならずジャケパンスタイルに落とし込むのもおすすめです。
軽すぎないウェイトのサヴィル・クリフォードであるからこそ、立体的なシルエットで作り上げるイギリススタイルにもマッチしやすいです。
イタリア的に仕立てる
秋冬生地でも目付285g/mがメインとなるサヴィル・クリフォードなので色々と使いやすいです。
↓の記事を参考にしました。
イタリアのスーツは色々なスーツのスタイルがありますが、今回はイギリスの生地サヴィル・クリフォードということでナポリスタイルよりもややイギリスのスーツ作りを感じさせるスタイルがいいです。
イギリスのスーツよりも曲線的にパッドを含めた副資材は薄いものを。秋冬であればブラウンなど、春夏であればソラーロの生地を使うのがおすすめです。
癖のない質感で使いやすい
スーツを作るにあたって仕立ては切っても切れない関係です。サヴィル・クリフォードは極端な癖がないので仕立てによってイギリス的にもイタリア的にもすることができます。
その上で使いやすい目付、湿度の高い気候でもへたりにくい実用性はその他の生地と比べても一線を画しています。
相反する2つが共存している生地
最新の機械や技術を用いながらも伝統を感じさせるサヴィル・クリフォードでした。共存し得ないかに思えるものが共存している不思議さを感じさせるのが魅力的です。
他の生地とは全く異なる魅力を持ち合わせた生地でスーツを仕立てるのはいかがでしょうか。
オーダースーツ専門店 サルトクレイス
髙橋