フィレンツェの名門『リヴェラーノ&リヴェラーノ』をリスペクトしたオーダースーツを仕立ててみました
イタリアには名門と呼ばれるスーツのテーラーが軒並み数多く存在します。
基本的には各地域に根付いた一族経営がほとんどの割合を占めており、それぞれが同じ作り方ではなく独自のスタイル(ハウスモデル)を全世界に提案しているのが現状です。
本日は日本のスーツ文化におきましても欠かすことの出来ない「リヴェラーノ&リヴェラーノ」についてお話し致します。
リヴェラーノが名門と呼ばれる理由
街全体が美術館と呼ばれるに相応しいイタリアのフィレンツェでは、「リヴェラーノ」が名門のサルトリアであり続けている事は紛れもない事実です。
数多くのアーティストや建築家、作家などを顧客に持っているほど芸術性の高い仕立てを提供できるのも大きな強みと言えます。
スーツ職人であるアントニオ・リヴェラーノは7歳の時に仕立てと触れ合い、11歳からひたむきに修行を続けて、1940年代に自身のアトリエを開設しました。
フィレンツェと言えば日本でも靴職人の方が有名ですが、芸術性の高いものづくりをスーツにまで落とし込めた功績は後にも先にも彼の存在が大きく実力者である事は否めません。
リヴェラーノの象徴的なディテール
ここではリヴェラーノのスーツがフィレンツェだけではなく世界的に「名門」と呼ばれるには欠かせない象徴的なディテールをご説明します。
ここからが大きなポイントとなりますので熟読願います。
逆三角形のシルエット
リヴェラーノのスーツはイタリアの中でもイギリスとフランスが融合したような独特の構築感があります。
柔軟で軽快なナポリ仕立てとは違ったYラインと呼ばれる逆三角形のシルエットを重要視しております。
見た目は構築的ですが、着ると柔らかく至高の着心地が保証されます。
下向きなゴージライン
コージライン(上襟と下襟の繋ぎ目のこと)にご注目ください。
ポジションは低く肩線に傾斜をかけた角度とほぼ平行に繋ぎ合わせております。
ここを疎かにしてしまうと仕立てのスーツは美しくなりません。
ゴージラインの位置が低ければ低いほど前下がりでクラシックな印象が強くなりますが、これこそが各界の芸術家を虜にしたリヴェラーノのハウスモデルになります。
前身頃の拘り
LIVERANO & LIVERANO リヴェラーノ・リヴェラーノのジャケットが最も特徴的なのはフロントカットまでが一つの線でつながるシルエットになっており、何故か1枚の絵画のような美的感覚を覚えてしまいます。
その理由としてはオーセンティック(正統派)でありながらも他のスーツとは決定的に違うところがあるからです。
それは、ダーツが取られていないところです。
英国色が長引いた日本国内のスーツは、前ダーツをいれる事で立体感のあるシルエットを構築します。
ナポリ仕立ては裾まで続くフロントダーツが主流ですが、フィレンツェのリヴェラーノはダーツを取らない前身頃で、流線型の仕立てにフォーカスを置いております。
「我々はブリティッシュスタイルとは違います。彼らは18世紀の伝統とスタイルを守っている。我々は21世紀のスタイルを表現している。」
アントニオ・リヴェラーノ氏の名言通り、時代に合った服作りを追求している姿勢は80歳を越えても尚、職人で在り続けている誇りであると感じます。
リヴェラーノを模範にオーダーしてみました
最近のオーダースーツ需要は特に二極化が顕著になったと強く感じております。
特に20代半ばの方にもクラシックが浸透し、それが逆に新鮮な世代として受け入れられている上昇傾向もあります。
今回は顧客様からのご要望をご紹介致します。
その内容としましては
ビジネスライクでありながら、「リヴェラーノを模範としたお仕立てをお願いします。」
というクラシコ好きには堪らない内容でした。
こういったお仕立てに応えられえるのも弊店の強みであると考えております。
イギリス調のイタリアブランドからの生地選び
リヴェラーノを模範にスーツを仕立てる上で欠かせないのが生地の質感です。
工業製品には出回っていないような生地でなければハンドソーンの定義も無くなってしまうからです。
そしてリヴェラーノ特有のユーモアと芸術性から考察すると、イギリス調のイタリアブランドからお選び頂くことが近道になります。
生地の強度に特徴のある正統派なイギリスを真似て製作したイタリアブランドというところがまたおもしろいポイントですね。
肩パットの選び方
肩甲骨の付け根まで緩やかにカーブする肩線には肩パットを極力抑えて製作する必要があります。
傾斜に対して袖山を乗せるように付けると(乗せ袖)それは英国のお仕立てになってしいます。
見た目は構築的ですが、着用すると柔軟で軽い肩パットがリヴェラーノならではの特徴になります。
曲線を重視した採寸
それでは最も重要な採寸です。2年~5年先を見据えた服作りでなければお客様のスタイルを構築できません。
従来よりもややゆとりを計算したフィッティングがカッターの役目ですね。
副資材を決定する中縫いや最終工程の本縫いをどれだけ拘っても数値が狂えば売り手側の自己満足に終わってしまいます。
リヴェラーノが発信してきた曲線を重視するためには横皺や縦皺はあまり入らないような芸術性が必須になります。
仕上がりの感想
率直に申し上げますと成功でした。
お客様も何度も店舗に足を運んで頂くほどの関係性となり、売り手側もようやくひと仕事が終わったという感想です。
ダーツを取らないことで気取りすぎないウエストを構築出来た事が成功事例でした。
イタリアの感覚的な縫製も素晴らしいですが、日本の緻密で丁寧な縫製も世界レベルです。
そういえば、リヴェラーノ&リヴェラーノが大阪淀屋橋にフラッグショップが出来るようですので研究も兼ねて足を運んでみようと思います。
オーダースーツ専門店 サルトクレイス
田原
当店のコロナ対策
サルトクレイスでは全店でコロナ対策に取り組んでいます。
アルコール除菌を店頭にてご用意しておりますので、ご来店の際は気兼ねなくお使いくださいませ。
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