スタイリストインタビュー vol.2
サルトクレイスのWeb担当による店舗スタッフインタビュー、谷町本店 近藤店長に続きまして第2弾は谷町本店 田原さんです。撮影も兼任しているWeb担当、お店での撮影のたびに生地や仕立てのうつくしさに見惚れ、商品について質問するたびに店舗スタッフさんの並々ならぬこだわりを当たり前のように飄々と話される様子に日々驚いています。
特に仕立ての歴史的背景や生地の知識など造詣が深く、それを活かした着こなしが抜群の谷町本店の田原さんに
オーダースーツスタイリストのお仕事へのこだわりをうかがいました。
まずはサルトクレイスでお仕事するようになった経緯をお聞かせいただけますか
大学のときはカジュアルのアルバイトをしていました。新卒で着物の営業を経験し、そのあとスーツの販売に転職しました。そして、そのあとサルトクレイスに入社してオーダーの仕事を始めました。
ということは、ずっとアパレルですね
そうですね。「洋服業界をある意味すべて網羅するようなキャリアを30代までに」と学生のときにある程度ぼんやりと考えていました。
すごい・・・では最初から計画的だったのですね
そうですね。そこは一貫していました。
カジュアルはGパンや既製品のスーツを扱っていました。着物は反物の生地をお見せしたり着付けをしたり、素材からイメージしてお客様に合わせ作っていくというのはオーダースーツにも通じる面があると思います。
ではもう「満を持してオーダースーツに」という感じですね
ここで仕事する決定打となったのは1つは、比較的フルオーダーに近いかたちの仕事ができるところ2つ目は、いろんな業種の経験者のかたが多くいらっしゃるというところ。その2つの条件が揃っていたのがサルトクレイスでした。
これからのキャリアを考えたときに、経験者の方たちから学べることが多いと思ったんです。実際に研修期間から丁寧に教えていただいて、その後もいろんなバックグラウンドをお持ちの方と一緒にお仕事していくなかでたくさんの知識を吸収してこられました。もうこれ以上はないんかな、くらいの感じはしたんです。サルトクレイスは今年で6年目になりますね。
お若くしてたくさんの経験を積んでおられるのですね!
いえいえ、全然そんな(笑)
ライフキャリアとリンクするオーダースーツの世界
接客などオーダースーツのお仕事をしていらしてよかったことはありますか
納品のときですかね。お客さまの反応がダイレクトに感じられる時間です。
あと紹介をもらったときでしょうか。お客さまから指名でご紹介をいただくのは本当にありがたいですね。
紹介って心からほんとうに信頼していないとできないことですよね
自分自身への信用に関わってくることですから
ありがたいことです。
そんな姿からもお客さまから信頼されるのが頷けます
接客で気をつけていらっしゃることとかはありますか
お客さまそれぞれにその人の思いをもってご来店されていると思うんですよ。そのニーズに合わせていくこと。
人生の節目節目で昇級されたり、お仕事で成績が上がったり様々な出来事があります。それに寄り添っていく、ということでしょうか。
ではお仕事のお話をお客さまからうかがったり、ということもあるのですか
もちろん、普通に生地見せたりとかと同じようにお話しします。お客さまのレパートリーとストックと、これからどうなっていきたいのか。
着るものと人生はリンクしているのですね
「こういうものが欲しい」ということに対して「欲しいもの」を提案すると、まあそれは普通の満足やと思うんですけど、もう一歩先いった感じの提案をしていますかね。例えば時代感を出していったり。もともとカジュアルも好きなので。
なるほど、ヒアリングから流行など付加するとよりよいことも考えてお伝えしていく・・・
流行を取り入れるのは、ビジネスシーンでもちょっとしたアピールになりますよね
「スーツ=ビジネスウェア」ではない!?
ご自身がお店で着られているコーディネートは、スカーフ?など一見男性には難易度の高そうなアイテムを自然に取り入れていらっしゃるのが印象的です
スーツやジャケットの着こなしでポイントとなることは何だと思いますか
あ、それはネッカチーフですかね(笑)これだけ「クールビズ、クールビズ」と言われスーツを着るスパンがますます短くなっている時代です。そこに対して何ができるのかを考えると、スーツ以外でのアプローチをしないとダメやと思っています。例えばネッカチーフなど小物の着こなしとか、気をつける色のポイントとか素材とかです。夏場はリネンあと綿をメインにしたり、冬はシルクとか、スーツだけでなく小物にも季節の素材や色使いがあります。
とある日の田原さんのコーディネート 開襟のプルオーバーに色味を抑えたペイズリー柄のネッカチーフ
もちろん普段「奥さんと映画見に行く」「家族で旅行に行く」というときに羽織るものとか、あとは「ゴルフ用」とか。「スーツ=仕事」だけで見てしまうとやっぱりしんどいですかね。
なるほど!確かにプライベートでも着ることも含めて想像するとよりワクワク感が得られそうです
仕事着だけで考えてしまうとスーツがつまらないものになってしまう、スーツの魅力はそれだけではないぞ、と勝手にカジュアルのときに思っていました。
私のような普段スーツを着ることはほとんどない人でも、ひとつ体に合ったジャケットを持っているだけで「待ち合わせのレストラン、ググったらちょっといいとこじゃないか〜どうしよう〜〜」というときなど、便利ですよね
そうですね。着回ししやすい色や柄と形で、春夏と秋冬で一着ずつあると便利だと思います。
シャツはどうですか
シャツにも流行があって今は立ち襟じゃなく「開襟シャツ」というスーツの上に衿を出す着こなしが多いです。その場合、襟の芯を柔らかくして作る提案をしています。
ジャケットの衿の中にキュッと立ててあるシャツ襟じゃなくて、ちょっと出して見せてあげる
襟も柔らかく作り、着こなしも柔らかい雰囲気で着る、というのが流れとしてはありますね。
シャツの襟にも流行があるのですね
確かに同じスーツでもずんぶん印象が変わりそうです
流行をちょっと意識することで着こなしの幅は増えると思います。
お店にはシャツの襟型見本も揃っています
真ん中はネクタイの下でタブを留めパリッとクラシックな雰囲気を出す「タブカラー」
インタビュー中教えてくださったシャツの小技「ミラノまくり」 一度大きく捲り上げてその下の輪になった部分をもう一度折り返します この袖の折り方だとお洒落かつ落ちてきにくいのだそう シャツの素材はリネンで夏らしい色味
流行の取り入れ方もエレガントに
初心者でも取り入れやすいアイテムを教えていただけますか
そうですね、やはりジャケットですかね。今はネクタイ・チーフ付けないことも多いと思いますので。
さっきのお話のようにプライベートでも使えるような・・・
オススメの生地はありますか
これなんかですね。
田原さんおすすめ生地 淡く上品な色使いとしなやかな手ざわり
うわわ〜きれいですね
しなやかで女性が着てもよさそう
あとはまあ「英国調」というスーツ業界の流れがあってこれが「タータンチェック」。
けっこうカッチリも着られるしカジュアルダウンもできそう・・・
あと「ウィンドウペン」、イギリスの昔ながらの柄です。「ウィンドウペン」はイギリスの田舎の家の窓をイメージした名称なんですよ。
どちらも物語に出てくるイギリスのおじいちゃんなんかが着ていそうなイメージですね
まさしく英国紳士的なステッキ持って帽子かぶってる感じの・・・
そうですね。生地はこのような正統派「英国調」で、一方お仕立ては「イタリアっぽく」やわらかく。そしてシャツ・ネクタイは「アメリカ的に」合わせる、というのが今年の主流です。
へえええーそうなんですね
生地はカッチリしているけど、ちょっとセクシーさもあり、みたいな感じですか
そうですね。
ご自身でもスーツやジャケットは流行に合わせて作られるのですか
うーん、流行に合わせる、というよりかは「すこし取り入れる」という感じでしょうか。完全に合わせてしまうとやはりお客さまと乖離してしまうところがあるので「半歩先行く」という感じは意識しています。
型は守って自分らしくもあり、流行も取り入れ、というバランスでしょうか
そうですね。
取材日のコーディネート
衿もとを彩るブートニエールとチーフ シャツはなんと既製品なのだそう
お店ではお手持ちのアイテムとのコーディネートもご提案いただけるそうです
袖口の本切羽はボタンを全部外してラフにアレンジ
フレアになった肘下のラインが身体の動きをエレガントに見せてくれます
足元はワンウォッシュのデニムに黒のローファー
デニムのロールアップとセンターパーツが親しみやすくも品のよい表情を際立たせます
お着物の販売もご経験されておられるとのことですが、バンチブックって呉服店で見かける反物より小さい気がします
仕上がりイメージを作っていくときはどんな感じなのでしょうか
シーズンごとにサンプルとして仕立てたものがあるのでそれをお見せしながらお話ししていきます。あと生地によっては反物としてもお店にあるので、イメージしやすいかと思いますよ。それらを見つつ、お話を伺い、種類の多いバンチブックで選択肢を広げつつイメージを固めていきます。
お仕立てのサンプルはスーツのみならずベストやシャツも
反物の生地 画像はエルメネジルド ゼニアのエレクタ
ご自身は普段もスーツは着られますか
普段は着ないですね。カジュアルです。
そうなんですね、全然イメージできないです!
ずっとこういうスタイルなんじゃないかと
それはお客さまにも言われますね(笑)
もし街ですれ違ってもわからないと思います(笑)
(笑)
以前サルトクレイスのサイトのプロフィールに「趣味:Youtube鑑賞」とありましたが、どんなジャンルがお好きなのですか
ファッションと音楽ですかね。ロック全般を聴きます。音楽・ファッション・アートとかは全部関係していると思います。
スタイルの表現というようなことでしょうか
そうですね。あと映画もファッションにつながってくると思います。
どんなジャンルがお好きですか
けっこう何でも見ます。もちろん趣味でも見ますけど、勉強のツールになります。
スーツなら、昔のギャング映画なんか参考になりますよ。スリーピースのスーツとか。着こなしとか。
あああ〜なるほど
やっぱりイタリアのスタイルみたいなのがかっこいいのでしょうか
そうですね、やっぱり好きですかね。ナポリのちょっとやわからい感じの、エレガントな感じが。
エレガントでちょっとセクシーなイメージがありますね
映画で海外の俳優さんを見ていると日本人とは体格が違うように思いますが、日本人に合った仕立てというのはあるのでしょうか
今はイタリア風のやわらかい一枚芯のスーツ、肩パットを抜いてリラックスして着る、というのが主流としてあって、それは日本の気候にも合っていると思います。イギリスのがっちりしたお仕立てよりかは、やわらかい仕立てのスーツのほうが合うとは思いますね。
体型が似ていたりとか生地がやわらかいのを好む、だからイタリアの業者が日本にたくさん卸しをしている、と言われているんですよ。
歴史的に見てもそういう傾向があるのですね
デニムもイタリアのブランドが日本にも多く入ってきている印象があります
デニムも色の出方とか、エレガントでセクシーなんじゃないですかね。全体で見たときや着たときの雰囲気というか。
生地の技術や縫製面でもクオリティが高いのでしょうか
そうですね。やわらかく縫って可動域を出すお仕立てです。
日本はものづくりがすごいと言われ世界的にも評価されていると思いますが、一方でイタリアの人たちは結構ざっくりと縫うみたいなんです。それはやっぱり「着たとき」にエレガントに見える、歩いたときに魅力的に見える、そういった立体的なものづくりという面ではイタリアがいいと言われていて、日本の職人や工場にもその技術が取り入れられています。
なるほど・・・着てその人がその人の動きをしたときに最も魅力が引き出される・・・奥深い世界ですね
今日は貴重なお話をありがとうございましたありがとうございました。
谷町本店の前にて
インタビューをしている私自身がどんどんオーダーしたくなってくるこのシリーズ、今回はいかがでしたでしょうか。
お話うかがい終えてのひとこと、「ちょっと大事な日に出かけるときに自分にぴったりのスーツかジャケットがクローゼットにあるといいですよ」の説得力は絶大でした。。
サルトクレイスのブランドリストを見るとイタリアの生地が大半を占めています。会社にいると「ナポリ仕立て」などイタリアの単語が入った言葉がたくさん聞こえてきます。そもそも「サルトクレイス」の「Sartoria」だってイタリア語です。その理由もよくわかりました。
話が映画などカルチャーにまで及ぶと「ブルースブラザーズ」はアメリカンスタイルなの?007シリーズは時代によってスーツのシルエットも変化してるのかな?「ララランド」みたいに踊れるスーツって普通と違うのかな?「ゴッドファーザー」はどんなお仕立てなの?と興味は尽きません。
田原さんの言う「人生やライフキャリアに寄り添う」という言葉はビジネスシーンのみならずプライベートシーンも含めてのことなんだ、とお話をうかがううちに実感しました。
雑誌やwebからも常に情報収集されておられる田原さん。その勉強熱心さと知識量は、十代の頃から一貫してカジュアルもオーダースーツも含め「服が好き」だからこそ。お客さまにとっても、きっとその方その方に合った「半歩先行く」有用なお話が聞けることと思います。このお話の続きはぜひにお店で。
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