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映画『オッペンハイマー』のスーツ

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いつもサルトクレイスのブログをご覧いただきありがとうございます。

先日、映画『オッペンハイマー』を見てきました。原爆を取り扱う内容とだけあって公開後様々な意見があります。この場では内容については言及しないようにします。

さて、『オッペンハイマー』を見てきたスーツ屋が話すことと言えば、劇中のスーツについてでしょう。

シーンが切り替わる中で1930年代~1950年代のちょっとしたスーツの変遷を感じることもできました。

・・・映画の制作現場という書籍を予約しました。衣装は美術セットに含まれているのか、などを考えながら予約。映画の制作チームが当時の資料をもとにスーツをどのように解釈しているのかなどわかればいいなと思います。

今回はいくつかのスタイリングを取り上げ紹介していきます。1930年代が紳士服の黄金期と言われるので、スーツに注目するとアツイ時期が舞台となっています。

※劇中のスーツと年代について話します。予めご了承ください。

目次

映画ポスター

『オッペンハイマー』で主演を努めたキリアン・マーフィーを写したポスター。このスーツは主に1940年代に着用するスーツです。

特徴を列挙していきましょう。

  • 広めの肩巾
  • 太めの衿
  • 短いネクタイ
  • レギュラーカラーのシャツ
  • ツータックのトラウザーズ
  • ベルトを使用
  • ハイウエスト

ポスターのみから読み取れる情報としてはこんな感じ。

別カットの資料や劇中でわかることとして、

  • ジャケットはノーベント
  • 長めの着丈
  • トラウザーズは太めのシルエット

スーツに関して、近年クラシックというワードをよく耳にします。

太めの衿やツータックといったデザイン、特徴は受け入れられ取り入れる人が多くなったように感じます。一方でまだ少し時間がかかりそう、あるいは現代のスーツスタイルに取り入れられなさそうな特徴は、ノーベントや長めの着丈、広めの肩巾、短いネクタイです。

ツータックが受け入れられ、ハイウエストや太めのシルエットが相性がいいとなり、それに合わせるならジャケットは・・・となれば広めの肩巾や長めの着丈も受け入れられかもしれません。その後に短いネクタイ・・・。トレンドの変化が激しいことを考えると難しいでしょう。

トラウザーズ

トラウザーズの細かい部分に注目しましょう。履き位置は高めでシャツのブラウジングやポケットに手を入れていることも相まってウエストの細さが強調されています。

ベルトループがトラウザーズの上端から下がった位置についています。手持ちのトラウザーズは上端と高さが揃っているのではないでしょうか。ウエストコート(ベスト)を合わせたスリーピースが1930年代まで標準でブレイシーズ(サスペンダー)でトラウザーズを固定していました。ウエストコートを省略し、ベルトで固定するようになってもこの時期はまだブレイシーズの名残があります。

ポケットに手を入れた状態も美しくヒップ周りのゆとりがあることがわかります。オーダーされる時にヒップ周りにこれくらいのゆとりを取ることを許容されても太もも周りが太いのが受け入れられなそうです。太もも、膝、裾まで太いのでどっしりとした安定感が出ます。細めのテーパードパンツが与えるスタイリッシュ・アクティブな印象とは異なる魅力があります。

太めのシルエットではありますがクッションがあまり出ない丈で着こなしているので野暮ったい印象にはなりにくいです。

ジャケット

衿が太く肩周りにもボリュームのあるジャケット。丈は長めでノーベント。

丈の長さがわかるのがボタンの位置です。2つボタンの1つがけですがトラウザーズの上端と同じ高さにボタンがあります。トラウザーズがハイウエストであること、ジャケットの丈が要因です。近年のスーツであれば一番下のボタンとトラウザーズの上端の高さがほぼ揃うことが一般的です。ローライズのズボン(トラウザーズではなくあえて)、お尻が半分くらい見える丈のジャケットであればジャケットの一番下のボタンとズボンの上端に間ができることもありました。

ある種5年~10年前に流行していた細身のスーツと対極的といえるバランスになっています。

歴史的背景

1940年代のシーンでよく着ていたこのスーツですが、ウエストコート(ベスト)が省略されるなど戦時中であることの影響が見られます。それ以前の年代ではウエストコートも着用したスリーピーススタイルを着用していました。

ただ、1940年代のスーツはウエストコートを省略し、物資削減に取り組みつつも威厳を見せるように工夫されている面が垣間見えます。

体型について

J・ロバート・オッペンハイマーその人はかなり細身であったようです。

華奢な体型を隠したい人にはとてもおすすめのスタイルです。現代のバランスとの照らし合わせによって微調整を行い、ボリュームのあるスタイルを取り入れることで体のラインを上手く隠してくれます。

一方、お腹が出ており、腰骨の上、へその高さでトラウザーズを固定することができない人はこのスタイリングが非常に難しいです。ウエストの固定位置やジャケットとのバランスを考慮する必要があります。

今回のまとめ

最近のス-ツは細身の流れが残りつつクラシックなスーツを取り入れている流れなのでそのままに作ると少し奇抜に見えるかもしれません。

ただ、特に細身の人には要素要素を取り入れて体型を隠すのもおすすめです。

需要がありそうならより詳しく『オッペンハイマー』のスーツについて書こうかと思います(ジョシュ・ハートネットのスーツもかっこよかったんです)

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