夏のスーツは生地で変わるのか
夏場のスーツについてどのようにお考えでしょうか。
オーダースーツの販売員であっても着ていられないというのが正直な感想です。それくらい日本の夏は過酷です。
ただ、クールビズ的なシャツスタイルだけでは物足りなく感じてしまうことも・・・。
今回は夏に着ているスーツの着用感についてとなぜおすすめなのか解説していきます。
夏に着ているスーツの着用感とおすすめ
エントリーNo.1
-白リネン-
2023年に新調したのがリネンスーツ。まだ夏本番を迎えてはいないのですが。
生地は「SPENCE BRAYSON」のTyrone、OATMEALです。白リネンと言えば昭和を感じさせる雰囲気を持っています。近年街で見かけることもないのでなおさらでしょう。
白は熱をためにくいこと、見た目涼しげというアドバンテージがあります。
・汗ばんでも不快にはなりにくそう
・本当に暑い日は着れないかも
まだ猛暑日などで着用していないので推測ですが、夏のスーツスタイルでの理想は外からの熱を遮断し、体からの熱を外に放出できること。特に汗をかくことで体の熱を排出するので吸湿性は重要といえます。厚さもあり、熱を吸収しにくい白色ということでそれなりに期待しておこうかと思います。
肘の深いシワは好みがわかれるポイント 太い糸で織られている
エントリーNo.2
-強撚トロピカル-
今年で4年目になるスーツ(正確にはトラウザーズはあとで作りましたが)平織りの生地で280g/mと夏に着るスーツとしてはやや厚手。強く撚った糸はハリコシがありシワに強いのが嬉しいポイントです。肝心の暑さに対してですが、
・汗をかいても生地の肌離れがいい
・熱はこもりにくい
総合的にみるとやや涼しいと言えるくらい。私自身のスーツはすべて総裏にしているので背抜きにするともう少し涼しくなると思います(通気性よりも生地の保護を優先して総裏に)
ただ、後述するスーツに圧倒的に勝るポイントが生地のタフさです。夏のスーツスタイルの天敵は湿気です。生地が水分を多く含んでいる状態では傷みやすく、また見た目がよれっとしたりシワが取れなかったり。特に連日着用したときは特に・・・。その点強撚のトロピカルは数日連続して着てもきれいに着ることができます。高温多湿の日本で連日スーツを着る方にはぜひ候補にいれてほしい生地です。
糸を強く撚っていてシワになりにくい
エントリーNo.3
-キッドモヘア混-
シャリ感と上品な光沢が特徴のモヘア混生地。通気性が高くややかためでものが多いです。私が着回しているのがキッドモヘアという生後1年未満のアンゴラヤギから取った毛を使っているもの。毛が細くドライタッチな質感です。暑さに対しての評価は
・生地の肌離れが抜群
・通気性はあまり感じない
・熱はこもりにくく快適
夏場の快適度は抜群です。汗をかいてもピタッと肌にくっつく感じはないし外から熱を体に伝える感じもあまりないので涼しく過ごしやすいです。湿気に強く光沢があるので快適さと高級感のバランスが優れています。ただ摩耗にはやや弱いので数着でスーツを着回せる方におすすめです。
上品な光沢と夏でも快適な着心地
個人的に所有している夏のスーツは以上です。実際に着てみてのおすすめは
・実用重視なら強撚トロピカル
・華やかさ重視ならキッドモヘア混
強撚トロピカルは機能的で見た目もきれいな状態をキープできるのが便利です。柔らかい生地が好みの方や柄物のスーツを選ぶわけでなければ一着手持ちに加えてほしい生地です。
試してみたい夏向けスーツ生地
コットンスーツ
ビジネスシーンなどには使いにくいだろうコットンスーツ。カジュアルに着るスーツとしてはすごく興味深いです。コットンだから無条件に夏場に着やすいということはなく、生地の厚みや織りを考えて。シワやパッカリングの表情を楽しむのがコットンスーツの魅力と考えると夏向けのスーツとしては手が伸びにくいです。
コットンなら薄手のジャケットをラフに羽織るくらいがいいですね。
ウールリネンスーツ
お客様にもご提案しているウールとリネンの混紡生地。ウール100%やウールとポリエステルの混紡と比べると少しカジュアルな雰囲気があり、リネンの割合が高くなればよりカジュアルになります。生地の質感や仕上がりも涼し気な感じがあり、お客様にも好評です。
ポロシャツをインナーにするようなコーディネートなど幅広いスタイリングができそうです。
まとめ
今回は主観多めで夏のスーツについて考えました。
個人的に最もおすすめなのは、「強撚トロピカル」です。
・シワになりにくく、耐久性が高い
・肌離れがいいので汗をかいても不快になりにくい
・通気性が高く蒸れにくい
・光沢は控えめなものが多い
光沢がある方が好みだったり、生地の手触りとして薄手のものがいいなら「キッドモヘア混」がおすすめです。上品な光沢が楽しめます。スーツスタイルを工夫して暑い夏を乗り越えましょう。